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年に5回ほどテレビを付けることがある。
DVDはよく借りて見てるので、この場合は地上波でも見てみるか、の意だ。
そんな心持ちになるのが最近は年5回ほどと少ない。
子供の頃は熱烈なテレビっ子だったのだが。
貴重なタイミングなのだが、そんな時、たまたま見たい番組をやってたりするから不思議だ。
一ヶ月の番組表を見渡したとして、唯一興味があると思えるような番組に、そういう日はだいたい当たる。
NHKの「ボブディラン特集」。
おれの中のボブディラン、なんて話をするほどおれはボブディランのファンではない。
だが、テレビでボブディランのドキュメンタリーをやってたのなら、それを見ない手はない。
ボブディランがフォークの新生として人気を博したのち、かの有名な”Like a rolling stone”を発表した頃の映像だった。
フォークなディランのファンになった人たちは、新しくエレキギターを構えたボブディランを痛烈に批判する。
そんな時期。
あるライブ会場での映像だった。
曲間でファンの一人が叫ぶ。
「ユダ!(裏切りもの)」
会場は大いに沸く。
実にアメリカらしい。
それを聞いたボブディランの一言はこうだ。
「おれはお前らになんか期待してない。」
静まり返る会場が映っていた。
どうやらおれはこの言葉を聞くためにテレビをつけたらしい。
もしかしたらファンの間では有名なエピソードなのかもしれない。
正直、その後のボブディランの歌詞制作の秘密みたいなドキュメンタリーはどうでも良かった。
身体が熱くなった。
これだからたまに見るテレビは辞められない。
今夜はボブディランを聴きながら寝ることにした。